三つ目。整形をした。
顔をいじり、体に関しては女性好みのそれに鍛え上げた。以来、よく女性から声をかけられるようになったため、いかにすれば女性が喜ぶのか話術や所作を学んだ。多くの女性(実験台)と接し続けて。

彼女に愛されるための己作りは終わった。
いよいよ、彼女との接点を作る段階と入る。



四つ目。仕事を退職し、彼女と同じ職場に入社した。
幸いにも小さな会社だったため、直接的な繋がりはないものの、彼女と挨拶が出来る関係となった。

そこから世間話程度まで交流を深める。彼女の趣味は調べ尽くしているため、世間話から良き友人として共に出掛ける仲にまで発展した。

気を急いてはいけないつもりだったが、気持ちを抑えきれず、ついには口走る。

『ずっとずっと、あなたのことが頭から離れなかった』と。

下手すれば今までの努力を無駄にする性急な告白となった。この告白は失敗に終わる。彼女に嫌われてしまう。そんな焦燥を胸に抱きーーもし断られたなら、このまま部屋に連れ去ろうとも強引なことも脳裏によぎったが、彼女は意外な言葉を返す。

ーーあの、まだ気持ちの整理が。た、大切な返事なのでよく考えさせて下さい。

真剣に俺との交際を考えてくれると頬を赤らめる彼女は、とても愛らしく思えた。

彼女の心の整理がつくまで何年でも待ち続ける気でもあったが、やはり一日経たずに気になってしまう。彼女の返事が貰えるまでの間、少しでも心がこちらに傾くように、様々なプレゼントを贈った。

まだ決まらないかと、贈った置き時計に忍ばせた隠しカメラを通して彼女の様子を見続けた。寝言で俺の名前を呼んでくれないかと気になれば、眠れない日々が続くほど、俺は彼女を見ることに時間を費やしていた。

寝食さえも忘れかけたあたりともなれば、彼女よりこんな言葉をかけられる。

ーー大丈夫ですか?

初めて出会った時の言葉を。
慰めではなく、あからさまに不健康な見た目となった俺への労りの言葉にせよ、本気で俺を心配してくれる彼女の姿が嬉しかった。

言葉だけでなく、あの時のように行動すらも起こす彼女は俺が食事をしていないことを知り、お弁当を作ってきてくれた。台所でレシピ本を眺めながら俺のために料理をしてくれる彼女。このまま絶食をし、より彼女に心配され、その優しさを独占したい気持ちにもなったが、せっかくの彼女の願いをむげにするわけにもいかない。

規則正しい生活を送る彼女に合わせた。
朝は彼女と同じ時間に起き、同じ朝食、同じ飲み物を摂り、同じ時間に出社する。彼女と同じ職場に入った際、彼女の住むアパート近くに引っ越しもしたから出社に関しては問題なかったが、仕事量の違いから片や定時、片や残業と帰りは上手くいかないことが多かった。その分、夕食と寝る時間は何とかして同じ物にした。

これから一緒に住むことになるんだ。生活サイクルを合わせていかなければならない。彼女のおかげで、健康体となっていく中、ようやっとあの日の返事を聞けた。