「恋人に嫌われたから、死にますぅぅ?ギャハハ、めんどくせー男だな。勝手にすればー?は?後処理?別にいいけど、きちんと金払えよ。どうせ、保険金はたんまり彼女に入るようになってんだろ?なら、貯金全部下ろして机に置いといてー、それ貰うついでに火葬してやっから。あー、はいはい。骨壺入れたら、彼女んとこ持って行くからさー。さっさと首吊れよ。じゃあな」

死体となった後処理を電話向こうの奴に任せる。親はきっと、俺の死体すらも放置するだろうし、何かしらの理由で俺の部屋に来た彼女に醜い死体を見せないための打開策だ。彼女の記憶にある俺は理想的な姿なままでいてほしいから。

彼女に知られず遠い場所で死ぬことも考えたが、やはり俺は彼女に愛してもらいたい。

死んでも愛してもらいたい。
俺と愛し合った記憶をいつまでも持ち続けてほしい。

寝ても覚めても、誰かと話していても、一人でいても、ふとした時にでも、その頭に俺を思い浮かべてくれればいい。

君を愛した果てに死んだ俺を。
きっと、強く印象に残るはずだから。

想像しただけで、唇が綻ぶ。
彼女に愛してもらえるならと、鼻歌さえも出てきた。

首吊りの用のロープを購入し、ドアノブに引っ掛ける。念のため、睡眠薬も一瓶飲み干した。眠気が出る薬のはずなのに、逆に瞳孔が開ききった気分に陥る。

興奮していた。鼻歌はいつの間にか哄笑に変わっていた。

死ねる、死ねる!彼女のために死ねるんだ。彼女と愛し合った幸せな日々を思い描きながらようやっと人生を終えられる!なんて幸せなのだろうか、この幸せのまま息絶えたい!
もっともっと彼女に愛されたいんだ!死んでもずっとずっと愛しているのだから!なんて身勝手なのだろう、彼女の重荷になると分かっているのに、やめることが出来ない。彼女を泣かせる最悪な男だ。人を愛してはいけない男はより苦しく殺さなくちゃいけない!なおも苦しく、よりひどく!そう、そうだ!その調子でどんどん、彼女を苦しめる俺を殺してやればいい!そうすれば、彼女は喜んでくれる!


俺が死ねば、彼女はーー