「もう、君は。俺が泣いても『大丈夫?』と言ってくれないんだね……」
彼女もまた泣いている。
薄暗い空間に相応しい感情で満ちたここに、彼女を閉じ込めておくわけにはいかない。
彼女は、俺と違う。
優しさで溢れた空間にいるべき人だ。
彼女を解放し、一人となった部屋で思う。
結局のところ、俺は人を愛してはいけなかったんだ。
異常と呼ばれる愛を孕んだまま、誰かと寄り添うことは許されない。俺の求めるものと、相手の求めるものの違いを気づけたはずなのに、認めたくなかった。
愛情ではなく、彼女の優しさに甘えすぎていた。俺の異常さを感じていたはずなのに、最後の最後まで突き放さなかった彼女。溝を埋めようと必死になっていたが、その実、彼女の方が俺との関係を修復しようとしていたに違いない。
あまりにもおかしい俺を、普通にしようと、彼女は寄り添ってくれていたのに。俺は身勝手なことしかしていなかった。
それなのに、まだ彼女のそばにいたいと思ってしまう。彼女を傷つけるのを承知で、なおも。ーーまた愛してほしいだなんて。
また空っぽになる。彼女への愛情で膨らんだ分、より大きく。酷く。苦しく。飢えていく。
彼女が望む俺(恋人)になることも出来なくなった。この身は、彼女なしでは生きることも出来なくなっているのに。
「……、もういいか」
ずっと昔から思っていたことだった。
死んでないから生きてきた。そんな幼少期から今まで。彼女と出会い初めて生きてきて良かったと思えたんだ、十分だろう。
何よりも、俺は罰を受けなければ。
常々、彼女を不幸にするような奴がいれば殺したいと思っていたんだ。今回はその対象が俺になっただけの話。