side悠







「光よ、風を起こせ」






ベッドの上に腰掛ける俺の目の前で何度も何度も真剣な表情で、時に滴る汗を拭いながらも詠唱を繰り返し唱える紗久。




が、それが魔法という形になることはない。






やはり、魔法を使う感覚もよくわかっていない紗久には魔法石を使うなんて芸当、難しいのだろうか。





だが、紗久には少しでも魔法を使えるようになって貰わなければならない。





戦争に巻き込まれた時、もちろん紗久のことを守る覚悟はあるが、万が一だってある。






最悪の状況を考え、紗久もせめて紗久の封印されている魔力ではなく、もっと封印なんてもちろんされてない手軽な魔法石を使って一瞬だけでも身を守れるようにしておいてもらいたい。