「沙良ちゃん気を付けて〜!“ 黒川くん ”、むっつりスケベだから!」


黒川くんが私の腕を少し強引に引っ張ってベンチから立ち上がり歩き出すと、愛葉くんが口の横に手を置いて大声でそういった。



む…むっつり…スケベ…。



「……」


黒川くんは愛葉くんの声に反応することなく、私の腕を捕まえてズンズン歩いた。




「…黒川くん、大丈夫なの?愛葉くん」


「あいつの名前呼ばないで」


「…あ…うん。ごめんなさい」


いつもよりぶっきらぼうにそういう黒川くんの背中が少し怖くてとっさに謝る。



「…違う」


「え?」


黒川くんがいきなり立ち止まり、クルッと振り返ってこちらを見た。



「…今のは…八つ当たりだ」


八つ当たり?


「…あいつらに、姫野さんのこと見られたのが嫌で。あんなこと言い出すし…」



嫌って…。
私といるのを見られるのが恥ずかしいってこと?


「嫌っていうのは…姫野さんのこと恥ずかしく思ってるからって理由じゃないよ?」


「うっ…」


心読まれてる…。