『そう言うことではない。お前が動くには少し早いと思っているだけだ』

「……なるほどな」
 
そうは言っているけどまったく、本当にお前は昔から心配性なんだから。

「悪いが俺だって体が鈍っているんだ。少しくらい動いた方が今後のためだろ?」

『しかし……』

『行かせても良いではありませんか』
 
すると今度は、女性の声が頭の中で響く。

『私も少し気になっています。彼女の力がどういう物なのか』

『おい、お前まで……』

「じゃあ、決まりだな」
 
俺は空中魔法を使って、ラスールに向かって飛び始める。

「そうだ。【カレン】が居るってことは、サファイアも一緒なんだろ? 久々に会うことになるんだし、ちょっと話をしようと思うんだ」

『……今後についてか?』 
 
その言葉に俺はニヤリと笑みを浮かべた。

「ああ、今後のためにな」
 
そう、今後のために彼女にはあの子を見張ってもらっているんだ。確実に仕留めるために。

「それに……」
 
さっきから嫌な魔力をあの島から感じる。この森からもそうだが、あの島からはこの森よりも遥かに強い、闇の魔力を感じる。

ラスールの人たちにはお世話になったから、何とかしてあげたいと思うが……。

「ま、何とかなるか」
 
そうボソッと呟き、俺は緑色の瞳にラスールを映した。