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「ここが六月の岬だ」
　
ベルに連れられて、私たちは森から岬へと出た。

真夜中の森と一変して、目の前には海が広がっている。そして岬の先には、ぽつんとお墓らしき物が建てられていた。

「ここが……六月の岬」
　
太陽に照らされる海の水面はキラキラと輝いて見え、風によって潮の香りが運ばれてくる。

私は目先にあるお墓が少し気になって歩き出した。

「おい、ソフィア！　危ないぞ！」

「大丈夫だよ」

崖先にあるお墓の前に立った私は、しゃがみ込んでお墓に書かれた名前を読み上げる。

「エ……ル？」
　
しかしお墓に彫られている文字は、酷く風化してしまっているせいか、名前の所々が途切れてしまっていた。

その中で分かった文字は【エル】と言う二文字だけ。
　
私は立ち上がってお墓を見下ろし、崖先から海を一望した。

そして――

「ここ、見覚えがある気がする」

「……えっ」

「初めて来たのに？」

「うん……」
　
そう、なぜか私はこの場所を知っている気がした。

ここには今日初めて来たと言うのに。どうして懐かしいと感じてしまうのだろうか？

「私の案内はここまでだ。後は、本人たちから直接話を聞くんだな」
　
ベルはそう言って森の中へ戻って行こうとする。

「本人つったって、手紙の主なんて本当に来るのか？」
　
ロキのその言葉に反応したベルは、軽くこちらを振り返ると上を見上げた。

「居るじゃないか？　直ぐ上に」

「……上？」
　
その言葉に私たちはいっせいに空を見上げた。

すると空高くに黒い影が見えたと思ったら、その影は勢いを付けるとこちら目掛けて突っ込んでくる。

「なっ！」

「みんなに逃げろ！」
　
カレンはロキの手を掴んで左に飛び、アレスとムニンは私の方へと走って来る。

「ソフィア！！」
　
アレスに体を抱きしめられ、私たちはそのまま地面へと倒れた。

それと同時にさっきまでアレスたちが居た場所に何かが突っ込み、大きな騒音と共に土煙が上がった。