「さっきの戦いは、遠目ながら見させてもらった。人間族にしては、なかなか強い魔力を持った方々だと思ったが」
 
ベルはこちらを振り返ると、アレスの後ろを着いて歩いている私に指をさした。

「なぜ、お前は守られていた?」
 
ベルは目を細めると鋭い瞳で私を見てくる。

その姿に私は目を丸くし、彼女から感じた威圧で数歩後ろに下がる。

しかし直ぐにアレスが、私を守るように前に立った。

「ソフィアの中にある雫は、今不安定な状態なんだ。だから俺が、魔法を使わせないようにしたんだ」

「……ソフィア?」
 
私の名前を聞いたベルは、目を瞬かせると腕を下ろしてじっと私を見てくる。

「翡翠色の髪、薄緑の瞳……お前はまさか!」
 
彼女の言葉に私は首を傾げる。しかし直ぐに私は、あの時サルワに言われた言葉を思い出す。

魔人族の血を引く者――

ベルは何かをぶつぶつと呟きながら考え込む。

「まさか……いや、もうその時期と言うのか」
 
アレスは考え込んでいるベルを見つめながら、私へと声を掛ける。

「大丈夫か? ソフィア」

「う、うん、私は大丈夫だけど……でも」
 
さっきから心臓の鼓動が早くなっている気がする。

嫌な事を実感させられそうで、それが凄く怖かった。

そのせいで体も震えてきてしまい。

私はそれがアレスにバレないように、少し距離を取ったのだった。