「あなたが森人族？」
　
森人族のベルは私たちを警戒しているのか、橙色の瞳を細めると、順番に私たちに目を配っていく。
　
テトの言う通りなんて綺麗な人なんだろう。

そして……何て大きな胸。もう衣服から溢れ出そうなくらい大きくて、見ているこっちからしたらヒヤヒヤものだ。
　
すると私の前に立っていたアレスは、胸ポケットから依頼の内容が書かれた手紙を取り出し、それをベルに見えるように掲げた。

「俺たちは依頼されて来たんだ」

「……依頼だと？」

「人を探してほしいと、手紙には六月の岬で詳しく話すと書いてあった」
　
ベルは掲げられた手紙を見つめると手をかざした。すると手紙にほんのり光が宿ると、手紙は宙を飛んでベルの元まで飛んで行く。
　
手紙を受け取ったベルは、内容を確認するように手紙を読み始める。

「……なるほど」
　
手紙を読み終えたベルは、それを勢い良くアレスに投げて戻す。

「っ！」
　
あまりの早にびっくりしたアレスは、顔にぶつかるギリギリのところで何とか手紙をキャッチした。

「確かに手紙にはそう書かれているな。しかし、六月の岬に通すかは我々が判断する」
　
ベルはそう言うと、私たちに背を向けて歩き出した。

「着いて来いって事で良いのかしら？」

「さあな。でも、行くしかないだろ？」
　
アレスの言葉に頷いた私たちは、ベルと距離を保ちながら歩いて行く。

「ねえ、一つ聞いても良いかしら？」

「……」
　
テトの呼びかけにベルは軽くこちらを振り返る。しかし直ぐに前を向いてしまう。

「なんだ？」

「六月の岬もあなた達の縄張りなのかしら？」

「……違う。あそこは我々の縄張りでない。あそこはとある方々に任されているだけだ」
　
とある方々？　じゃあもしかして、アレスに人探しの手紙を寄越したのは、そのとある方々と関係のある人達？