森人(エルフ)族たちが縄張りとしているところまで行ければ、兎人族たちも手出しは出来ない。だからそこまで一気に行く!」

「……森人族」
 
きっと真夜中の森の中では、一番の勢力を持つ種族なのだろう。

「森人族たちは、精霊たちとの繋がりが一番濃い種族だ。俺たちなんかよりも、最大限に精霊の力を引き出して、魔法を操る事ができる」

「それに森人族は、魔法なんかなくても戦う事ができる種族よ。そんな人達を敵に回すことだけは、したくないかしら」
 
その言葉に一滴の汗が頬を流れた。
 
確かに九種族たちには、それぞれに合った戦い方をする。

それはきっと、戦争が行われた時代で培った物なのだろう。
 
でもこの時代では戦争は起こっていない。

それはエアがそれぞれの種族たちに領土を与え、世界を豊かにしてくれたからだ。

なのに……どうしてまた争いをしているの? そんなに、エアが与えてくれた領土だけでは満足出来ないの?

「俺は見た事がないけど、森人族は美男美女だって聞いたぞ」

「なぬっ! 美女だと!?」
 
【美女】と言う言葉にロキは真っ先に反応する。

「美女と言っても、その魅力を使って人間を騙したり、陥れようとするんだけど。あなたはそれでも良いのかしら?」

「美女なら大歓迎!」
 
ロキの迷いのない真っ直ぐな言葉に、テトは目を瞬かせ私たち三人は一斉に溜め息を吐いた。
 
絶対みんな同じ事を思っているだろうな……。

【何でこいつがここに居るのか?】と……。