「おはよう、アレス。入っても良いよ」

「おはよう、ソフィア。それじゃあ、お邪魔するぞ」
 
部屋の中にアレスを招き入れた時、ロキの姿がない事に気がついた。

でもさっきのカレンの魔法で、氷漬けにされているんだと思った私は、特に気にすることなく扉を閉めて、アレスの側へと歩いて行った。

「体の方は大丈夫なのか?」

「うん、さっきカレンに見てもらったけど、特に問題はないって」

「そっか……」
 
私の言葉に安心したのか、アレスは軽く息を吐くと軽い笑みを浮かべた。

「でも、だからと言って魔法を使わせる気はないからな」

「それさっきカレンに釘を刺された」
 
そう言って軽く頬を膨らませて見せた時、アレスの足元にちょこんと座っているムニンの姿が目に入った。
 
確かムニンは、夜遅くにどこかに行っていたんだよね? いつ帰って来たんだろう?
 
私は軽くしゃがみ込んで、座りながら眠っているムニンに声を掛ける。

「おはよう、ムニン。凄く眠そうだけど大丈夫?」

「うん……なんとか」
 
でもそう言っている割には、体がフラフラしているけど……。

「さあ、準備も出来たことだし、そろそろ向かいましょうか」
 
テトのその一言に私とアレスは大きく頷いた。

✩ ✩ ✩

「うわ〜! 綺麗!」
 
真夜中の森に向かってクロッカスを出た私たちは、森へと続く草原を歩いていた。

今私たちの目の前には地面一面に草原が広がっていて、風に揺られて草花が揺れている。

「夜だったから気づかなかったよ」
 
私は少し先まで歩いて空を見上げた。

今日も天気が良いのか、空は雲一つない快晴だった。

こんな日にこの場所でピクニックなんてしたら、絶対に気持ち良いだろうな。

お昼寝なんかしたら、直ぐに寝入ってしまいそうだ。

「今日の青空はいつもより青く見えるな」
 
私の隣に来たアレスも、同じく青空を見上げた。

そんな彼の横顔を見つめた時、頬が熱くなるのを感じた。

「お〜い! 何しているのよ二人とも!」

「早く来いよ〜!」
 
真夜中の森が目の前に見える入口では、カレンとロキが私たちを待っている状態だった。

その声に返事をするように、アレスは軽く腕を上げた。

「行くか」
 
その言葉に軽く頷いて、私たちは二人の元へと走って行った。