「ちょっ! 何するっ!」
 
そしてそのまま私はアレスに体を抱き上げられる。

「い、いきなり何をするのよ!」

「言っただろ! 安静にしていろって!」

「うっ……」
 
ベッドの上に優しく下ろされた同時に、私はアレスから目を逸した。
 
実を言うと昨日、私はアレスの居ない場所で魔法を使って倒れたのだ。

ミッシェルに頼んで、何とかバレないように上手く運んでもらったんだけど、結局はバレてしまった。

直ぐにバレないか思っていたんだけど、どうやらテトがアレスに報告したらしい……。

「まったく……勉強したい気持ちは分かるけど、まずは自分の体を労れよ」

「だって!」

「言い訳は聞かないぞ」
 
アレスは胸の前で腕を組むと、私に有無を言わせる前にバッサリと切り捨てた。

その姿を見て、本気で私の言い分を聞く気がないのだと知り。

「……はぃ」
 
私はがっくりと肩を落とした。
 
私が倒れるようになってからと言うもの、アレスは私の側から頑なに離れようとしない。

少々過保護すぎると思うんだけど。

「お前は私のお母さんか……」

「……仕方ないだろ? お前は少し目を離すと、直ぐに魔法を使っているんだから」

「それは!」

「【強くなりたいから】だろ?」

「うぅ……」

アレスに図星を指され私は言葉を詰まらせた。

そして目を右に逸らす。
 
アレスは直ぐ近くにある椅子にドカッと座った。

「まだ気にしているのか?」

「だって……」
 
あの戦いで私はみんなを傷つけてしまった。その中でカレンを一番酷く傷つけてしまったのだ。

前にお見舞いに来てくれた時、【気にしないで良い】とは言ってくれたけど、やっぱりそういうわけにはいかない。

「私は……怖いよ」
 
体を震わせながら、私は両肩にそれぞれ腕をクロスさせて手を置いた。

「もっと強くならなくちゃいけないの! あんな力なんかに飲み込まれないように……。じゃないとみんなを守れない。また傷つけてしまう!」 
 
もうあんな思いはしたくない! もう二度と誰も傷つけたくない!