検査結果は異常なしだったのに、なぜ魔法を使っただけでこう何度も倒れてしまうのかと、さすがに疑問を抱いた私は通っている病院の先生に尋ねてみた。

しかしそんな私に病院の先生は原因不明だと言い放った。

病院の先生でも分からないことがあるの? と、その時はふとそんな考えが過っていた。

でも……先生には言わなかったけど、私には少なからず心当たりがあった。

それはあの事件――世界の魔法(ヴェルト・マギーア)だ。
 
サルワによる、世界の魔法の完成のために私の(ロゼ)は器にされた。

膨大な魔力を雫に注ぎ込まれ、私の中で魔力を抱えられる数値が限界を超えてしまった。

そのせいで私の雫は、現状バランスが上手く取れていない。

魔法を使う度に魔力の制御が効かず、消費する魔力の量の制限も出来ないため、そのせいで体に負担が掛かってしまう。
 
だからアレスやテトには【安静にしていろ!】と散々言われた。

そんな言葉……私が聞くはずがないのに。

こんな体は一刻も早く治して、勉学に励まなければならないと言うのに……。

「もう、守られるだけなんて嫌だ」
 
拳に力を込めながら、私は自室の中でそう小さく呟いた。
 
自宅研修が言い渡されているため、私は自宅である屋敷に帰って来ているところだ。

最近やっとここへ帰って来れて、今はアレスに内緒で勉強をしている。

学校で授業の再開が出来ないのなら自分で勉強をするしかないのだ。

「よし!」
 
気合を入れ直して魔法書を開きかけた時、自室の扉が勢い良く開けられた。

バァン―ー

「っ!」
 
その音に心臓が大きく跳ねて肩も大きく上がった。

「…………」

背後から感じる鋭い視線を感じつつ、私は恐る恐る振り返ると声を上げた。

「げぇっ!!」
 
そこに居た人物を見て思わず変な声を出してしまい、私は慌てて両掌で口元を覆った。

「おい、ソフィア!」

「こ、こんにちは、アレス。元気そうだね〜」
 
扉の前に立っていた人物は、腰に手を仁王立ちしているアレスだった。

アレスは相当怒っているのか、鋭い目で私を見てくると目を細める。

その目を見た私の頬に汗が流れ落ちた。

「元気そうだね? じゃないだろ? そんなこと……今はどうでも良いんだよ!」
 
づかづかとこちらに歩み寄って来たアレスは、私から魔法書を取り上げた。