「もしソフィアに手を出したら、サファイアで凍らせて凍死させてあげるから」
 
カレンは鋭い目つきで、アレス以上にロキに脅しをかけた。

さすがのロキも二人から脅しをかけられたせいか、何も言い返す事なくコクコクと頷いていた。

「今思ったけど絶対零度の女って名称は、あなたじゃなくてカレンにピッタリじゃないのかしら?」

「うん……そうだね」
 
やっぱり氷結の魔道士って呼ばれるだけある。

ロキに人睨み効かせたところで、ここに居る私でも背中に寒いものを感じた。

本当に体が凍ったような錯覚に襲われて、季節はまだ夏だと言うのに、この辺りの気温は一気に下がった気がする。
 
ある意味カレンは【人造冷凍庫】だ。

「ま、結局二人じゃなくて、四人になったみたいね」
 
テトはこうなる事が分かっていたのか、ニコニコと笑みを浮かべながら私を見てくる。
 
まさか……テトが二人を呼んだのでは?

そんな疑問を小さく抱きテトを横目で見た後、瞳に三人の姿を映した私は軽く息を吐いた。

✭ ✭ ✭

夜中の一時頃――

俺は待ち合わせである学校へ向かうため、母さんを起こさないように書き置きだけ残して、ムニンと一緒にそっと家を出た。

そして直ぐ二人に捕まった。

ロキとカレンに待ち伏せされていると思っていなかった俺は心底驚いた。

二人には仕事の依頼については話していなかったと言うのに……。

だって、無関係だからな。

「それにいざとなったら、アレスだけじゃソフィアを守れるか心配だし」
 
鞘にサファイアを戻したカレンは、俺だけじゃ頼りないとでも言うようにそう言う。

その言葉に少しムッとした俺は、軽く目を細めてカレンの横顔を睨みつけた。
 
そして俺たちの前でカタカタと体を震わせているロキは、カレンの言葉に便乗するように言葉を続けた。

「そ、そうだぞ! もしソフィアちゃんの秘密がバレたらどうするんだ!」