「気がついて目を開けた時に、私は真っ白な世界を漂っていたの」

「真っ白な空間?」

「辺りには金色の光が飛び交っていて、その光景はまるで蛍たちが飛び交っているようにも見えた。でも……私にとっては、なんだか凄く懐かしく感じとれたの」

「それは訪れた場所とか、何かか?」
 
アレスの言葉に私は頭を振った。

なぜそんな事を思ってしまったのか、そう自分に問いかけても答えは出なかった。

心当たりだって何一つない。

しかし確かに私はあの時、【懐かしい】とそう思えたのだ。

まったく身に覚えがないのにもかかわらず。

いったいどうして……?

「そのあと、私の目の前に金色の光が現れたの」
 
【金色の光】と言う言葉に、アレスはテトへと視線を送る。

その事に気がついたテトは、アレスに相槌を送るように目を軽く細めた。

私は二人のやり取りに気づくことはなく言葉を続けた。

「その光はとても心地よくて、とても優しいものだった。まるで……私を守ってくれているような」
 
あの時に聞こえた女性の声は誰だったんだろう? 

でも私はあの声を聞いた事がある気がした。ずっと側に居てくれた気分にも襲われた。
 
どうしてそう思ってしまうのか、相変わらず答えは出ないままだけど、私はあの声の主を……知っているのだ。

「なるほど……話を聞いた限りだと、その金色の光がソフィアに害を与える存在ではないみたいだな」
 
そう言ってアレスは立ち上がると私の側まで歩いて来た。

そして手慣れたように私の頭に手を乗せると、軽くポンポンと叩いた後に優しい顔を浮かべた。

「お前が心地よく感じたり、優しいものだと感じ取ったなら、それはきっと間違いない。だからあまり心配することはないさ」

「アレス……」
 
もしかしてアレスは、その夢が私に害を与える物なのかどうか、見極めようとしたのだろうか? 

だから私の話を聞くためにわざわざ来てくれた……。
 
そう思った時、胸の辺りが温かくなるのを感じた。

私のためにと思うだけで嬉しい気持ちが込み上げてきて、私は彼に微笑みかけた。
 
そしてそっと告げる。