「ザハラ様!」
 
すると後ろの方で、私の付き人であるヨルンが慌てた様子で、こちらへと走り寄って来るのが見えた。

その姿を横目で見ながら私は軽く首を傾げる。

いつもだったら、落ち着いた様子で仕事をこなしている彼にしては珍しく慌てた様子で、疑問に思った私は口を開いた。

「どうしたのですか? ヨルン」
 
ヨルンは私の元まで辿り着くと、息を整えてから真剣な眼差しで言い放った。

「ついに、見つかりました!」
 
その言葉に私は目を丸くした。しかし直ぐに自然と笑顔が零れた。

「ようやく見つけましたか」
 
エーデルが姿を消す前に感じた、禍々しい魔力の持ち主がようやく見つかった。

時間は掛かってしまいましたがこれで……。
 
私はヨルンの横を通り過ぎ石段を下りて行く。

「……どうするつもりですか?」
 
そんな私の後ろ姿を、ヨルンは不安気に瞳を揺らしながら見つめてくる。

「そうですね……」
 
彼が不安に思うのも無理もないだろう。

だって……これから私がやろうとしている事は、簡潔に言えば【殺し合い】だ。

誰だってそんな事をすると知ったら、不安に思うものだ。

石段を下りて村を見渡せるところに立った私は空に手をかざした。

「ヨルン。今直ぐ用意して欲しい物があります」

「はい!」
 
あの魔力の持ち主を呼びつけるのならこの手が最善でしょう。

「本当に私たち【竜人族(リザードマン)】が仕えるのに値する存在なのか、この目で見極めなくては」
 
遺跡の方をもう一度振り返り、私はエーデルが座っていた場所を見つめた。