その日の放課後――
　
私は屋敷に戻って魔法書を読んでいた。アレスには止められているけど、今は体の調子がとても良いのだ。
　
こんなに調子が良いのは一ヶ月振りだろうか？　

だから勉強も捗るし体の調子が良いのだから、アレスも文句を言って魔法書を取り上げる事もないだろう。
　
そう思いながら魔法書のページを一枚めくると、机の上で丸くなっているテトが顔を上げて聞いてくる。

「良いの？　魔法書なんて読んでて」
　
テトは尻尾を左右に揺らしながら体を起こす。

その様子を横目で見ながら、私はもう一枚ページをめくってから口を開いた。

「大丈夫だよ。アレスは今居ないんだから」
　
そう一言だけ言い魔法書に目を戻した時、テトは部屋の窓辺へと登った。

そして外をじっと見つめると、ニヤリと笑みを浮かべてこちらを振り返った。

「じゃあ今私の目に見えている彼は、どうして息を切らしながらこっちに走って来ているのかしら？」

「っ！」
　
その言葉に私は慌てて魔法書を閉じて机の上に置いた。

テトの居る窓辺へと近づいて外を見た時、なんとアレスが息を切らしながら屋敷の敷地内へと入って来ていた。

「な、何でアレスが来るのよ？！　今日来るなんて聞いてないけど！」

「私だって聞いてないわよ？」
　
テトは満面の笑みを浮かべると、尻尾をゆらゆらと左右に揺らした。
　
その様子からして……アレスが来る事はテトには分かっていたようだ。
　
今直ぐ文句を言ってテトを問い詰めたいところだけど、今の私にそんな時間は残されていなかった。

机の上には数冊の魔法書が積み上がっていて、今からこれを片付けるとなると、アレスがここへ来るまではもう時間との勝負になってしまう。

「ま、まずい……！」
　
積み上がっている魔法書の中には、前にアレスが片付けてくれた物も数冊含まれていた。

せっかく片付けてくれたのに、魔法書を読んでいたなんて知られたら絶対に怒られる！　

いや、その前に【まだ病人なのにまた勉強していたのか！】って言われて、二つの怒りを買う事になってしまう！