「魔剣を一本手にした人がその気になれば、この世界を壊すことなんて簡単なのよ。でも魔剣に選ばれたカレンとセイレーンはそうしようとはしない。ま、良い子ってことなのかもね」

魔剣の存在は今のところ二本しか確認されていない。

いや、もしかしたら既に二本以上確認されているのかもしれないが、そんな美味しい情報をあいつらが簡単に手放すとは思えない。

だから表向き【魔剣は二本しか確認されていません】と発表しているのだろう。

その二本は既に持ち主が居るし、奪うことはまず難しいだろう。

そう考えると、あいつらは誰にも手を付けられていない魔剣を狙う。

しかし魔剣はエアの恩恵を受けたと言われているが、具体的にどんな恩恵を受けているのかは、魔法協会の奴らでも知る事は難しいはずだ。

前に噂で耳にしたが、ここ三百年くらい魔法協会はサファイアに近づく事すら難しかったそうだ。

サファイアの【氷結の力】があまりにも強すぎて、サファイアが認める者以外は近付ことしただけで、その身を一瞬で氷漬けにされ凍死させられてしまう。

だからサファイアが眠っていた部屋には、数えきれない程の凍死した死体がゴロゴロ転がっている。

その話を噂で聞いた俺でも、背中に寒いものを感じて鳥肌が立ったのをよく覚えている。

「とりあえず夢の件は、ソフィアに直接聞いてちょうだい」

「ああ、分かった。カレンたちにもソフィアの事は誰にも言わないように伝えてあるから、そこは心配しないでくれ」

「カレンはともかく、最も口の軽い人物がその中に含まれている気がするんだけど、それは大丈夫なのかしら？」
　
テトの黄金の瞳が鋭く光ったのを見て、俺はさっき食堂で呑気にソフィアに声を掛けていたロキの姿を思い出した。
　
俺は苦笑しながら頬をポリポリかきテロから目を逸した。

「ま、良いわ。放課後になったらソフィアの屋敷に来てよ。色々と話し合わないといけない事もあるしね」

「そうだな」
　
もちろんソフィアが見た夢の事も大事だが、手紙に書かれていた依頼の事もちゃんと話さないとな。