「私だって……先生が死んだら悲しいです!」
 
きっと先生はオフィーリアから引き継いだ事をやり遂げるために、命だって張る可能性がある。

ならそれを、いったい誰が止めると言うの? だって先生の側には……誰も居ないじゃない!

「私じゃ……駄目だってことは分かっています」
 
先生は私の気持ちになんてとっくに気づいているはずだ。

そういう事に関しては、意外と先生は鋭かったりする。
 
私は岬の先に一人座りながら、涙を流していた先生の姿を思い出す。

「……先生を苦しめているのは……彼女なんですよね?」
 
オフィーリアと言う存在が、先生を苦しめているんだ。彼女と言う存在が先生の中で色濃く残ってしまっているせいで、先生は開放されないでいるんだ。

「……ければ」
 
私は拳に力を込めて叫んだ。

「あなたさえ! 居なければ――!」
 
そこで私はハッとした。
 
今自分がこの先、なんの言葉を口にしようとしているのかが分かってしまったから。

「……私」
 
なんて酷い女なんだろう。そう思って私はその場に膝から崩れて座り込んだ。
 
先生にとってオフィーリアがどんな存在だったのかなんて、彼の顔を見れば直ぐに分かったことなのに……。

先生がオフィーリアのために頑張っているのだって、彼女を今も心から愛しているからなんだ。

それだと言うのに私は……身勝手な感情で、会ったこともない人に当たるなんて。

「……ごめんなさい」
 
私は……守護者失格だ。
 
そんな私の体を白銀の髪を持った女性が優しく抱きしめていたことに、私は気が付かなかった。