今の僕があるのは、彼女のおかげでもあるんだ。

「ありがとう、テト。お前にはいつも助けられてばっかりだな」

「なによ? 突然お礼を言うだなんて、珍しいじゃないの?」

「いや……言ってなかったと思ってさ」

「……ふ〜ん」
 
するとテトは黒猫へと姿を戻し、俺の右肩の上に乗ってくる。

「もしお父さんに会いに行くのが気まずいなら、私が行って色々とフォローしてあげようかしら?」

「大丈夫さ。もう俺だって一人で色々と出来るんだし」

「あら、そうかしら? 私から見たら、あなたはまだまだ子供よ?」
 
その言葉にイラッときた僕は、両手を使ってテトの体を掴み上げる。

「にゃっ!」

「いい加減さ、僕を子供扱いするの辞めてくれないかな? 僕だってもう立派な狼人族の大人なんだ。テトが居なくたってやっていける」

「……」
 
俺の言葉を聞いていたテトは、何も言い返すことなくじっと俺の顔を見てくる。

「なんだよ?」
 
その様子に首を傾げた時、彼女は俺の手の中でまた人間の姿に戻った。

「うわっ!」
 
そのまま体は後ろに倒れ込み、彼女が上に乗っかる状態で俺はテトの腕の中に閉じ込められた。

その中で黄金の瞳がキラキラと煌めいており、その瞳を見た僕の心臓の鼓動が早くなっていき、頬も体も熱くなってきた。

「ムニン……」
 
そして彼女は優しい声音で僕の名前を呼んだ。その声に不覚にもドキッとして、彼女から目を逸した時だった。

「ほら、もうその時点であなたは子供よ」

「……はあ?!」
 
テトは俺の上で猫の姿に戻ると、そのまま軽やかににジャンプして俺の後ろに下り立つ。