「他人の口から色々と知ってしまったとしても、そのおかげで見えなかった物も見えるようになったんだし、あなただって少しは成長する事が出来たのよ。だから、ああだから、こうだから悩むんじゃなくて、全てを空っぽにして考えてみなさい。その中で一番最初に出てきた答えが、あなたの本当の気持ちなんじゃないの?」
 
その言葉に僕は軽く目を見張った。

そして彼女の言う通り、悩んでいた事の全てを頭から追い出して、目をつむって考えてみた。

そしてたった一つの答えが出た時、僕はそっと目を開けてテトの手の上から下りて、狼人族の姿に戻り彼女の隣に座った。

「答えは出たのかしら?」
 
テトは黄金の瞳を軽く細めると俺の顔を覗き込んできた。

そんな彼女に俺は、軽く微笑んで頷いてみせた。

それを確認したテトもニッコリ微笑むと、真っ直ぐ前を見据えた。

「ほんとうに、手のかかる後輩なんだから」
 
そう言って彼女はどこか嬉しそうに笑っていた。

そんなテトを見るのが初めてだった俺は、少しその笑顔に見惚れた。
 
テトは昔からよく俺の面倒を見てくれた。

俺がテトたちの住む街にやって来た時、初めて声を掛けてくれたのも彼女だった。

「あなた……何て顔をしているのかしら?」
 
僕は母上を失ったショックで自暴自棄になっていたし、何より人を信じられなかった。

でもそんな僕にテトは使い魔という仕事を教えてくれた。

そこから使い魔になるまでの手続きや、魔法の習得だって見てもらった。