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【だからって、それが全部自分のせいだと思うのは間違いだ。お前は何もしていない。生まれて来なければよかったなんて思うな。だってお前は、スカーレットとフォルから望まれて生まれてきた子なんだから】
 
その言葉を思い出しながら、僕は一人で遺跡の上にちょこんと座って、夜空に浮かぶ月を見上げていた。

「母上と親父から望まれて生まれてきた……か」
 
そう小さく呟き、僕は黄緑色の瞳を細めて視線を下げる。

そして親父と母上の姿が脳裏に浮かんだ。
 
ブラッドさんのおかげで、僕は親父の気持ちを知る事ができた。

でもそれはブラッドさんの口から聞くんじゃなくて、直接親父の口から聞くべき言葉だった。
 
きっとこの島に来なければ、僕はずっと親父の事を誤解していたと思う。

ブラッドさんやソニヤに会わなければ、親父の気持ちを知ろうとは思わなかっただろう。
 
いくら何も知らなかったとは言え、僕はもっとちゃんと周りを見えるべきだったんだ。

もっと周りに気を配っていれば、何かが変わっていたかもしれない。

親父の気持ちや母上の気持ちにだって、気づけていたかもしれない。
 
でも……今更そう思っても遅い。

だってもう、母上はこの世にはいない。

親父にだって四十年も会っていない。

いや……どんな顔をして会えば良いのか分からないだけなんだ。