「彼女の名前は――オフィーリア」
　
その名前を言ったと同時に、潮風が俺たちの髪をなびかせた。

「彼女……オフィーリアは、【エアの末裔】と呼ばれる者たちの最後の生き残りだった」

「……最後の生き残り？」

「エアの末裔は代々、星の涙と呼ばれる宝石を守ってきた。その星の涙は膨大な魔力を秘めた雫でもあって、エアがその身に宿していた雫だったんだ。それをある集団が狙ってきて、彼女を除くエアの末裔たちは彼らによって皆殺しにされたんだ」
　
その話にカレンは目を見開く。その姿を横目で見ながら、俺は言葉を続けた。

「そして一人残ったオフィーリアは、レーツェルと共に魔剣の行方と守護者を集める旅に出たんだ。その中で彼女は信じた人に裏切られる事が何度かあって、そのせいで人を信じる事を恐れてしまっていた。それでも星の涙を守りながら歩き続けた彼女は……俺と出会った」
　
そこで俺は彼女と初めて出会った時の事を思い出して苦笑した。

「先生？」

「いや……ちょっとな」
　
出会いはお互いに最悪で、彼女は俺好みの子でもあっても、絶対に好きになるとは思っていなかった。

だが……。

「彼女と出会って一緒に生活をしていく内に、俺はオフィーリアを守りたいと思うようになっていった。だから俺は、オフィーリアが抱えていた問題に自ら首を突っ込んだ。でも……」
　
俺は拳に力を込めて目を細めた。

「そんな俺をオフィーリアは遠ざけた」

「えっ……」

「彼女は忘却(オブリヴィオン)の魔法を使って、俺の記憶の中から自分の記憶を消し去った。そして彼女は俺を守るために、自ら敵の手の中へと落ちた」

「そんな……」

「なぜオフィーリアがそんな事をしたのか、理由は簡単だった。それは……俺を愛していたからだった。俺を守るために、彼女は敵の元へと行ったんだ」