「みのりー!」
遠くから私を呼ぶ声が聞こえた。
声の主は予想がつく。いや、確信が持てる。
「孝宏、今日は部活ないの?」
振り向いて問いかける。
ない!と元気よく答えたのは、私の小学校からの幼なじみ、由良孝宏。
「だから、一緒に帰ろうぜ。どうせ家近いんだからさ」
「そうだねぇ。お前自転車なら乗せてよ」
「え、重くなるからヤダ」
「じゃあ降りろ、私が1人でそれに乗るから」
渋々、といった様子で後ろの荷台に促してくれる。
憎まれ口叩いて文句だって多いけど、本当はすごく優しい。
私は、密かにコイツが好き。
気づいたのは去年あたりで、友達に言われて初めて気づいた。
他の男子や女子にだって見せないようなテンションで話しているらしい。
「バスケ、レギュラー落とされたりしてない?」
「…二度と落とされたりしねぇよ。
…あ、今週の土曜空いてたりする?」
「練習試合かなんか?」
孝宏はバスケ部の9番。
インターハイを前にして、この時期は練習試合が多い。
私も中学まではバスケをしていた事もあって、よく孝宏の試合を見に行く。
「郷坂高校との練習試合。この試合に番号賭かってんだよ」
「マジか!」
孝宏は5番を目指してるらしい。
バスケでは4番がキャプテンで、5番がエースだ。
孝宏の実力を持ってなら取れなくはない番号だ。
「そっか、じゃあまた見に行くよ。頑張って」
「…さんきゅ!」
好きな人の試合を見に行くとか、リア充かよ。
私は恵まれてる。
好きな人の頑張ってるとこが見れて、好きな人に頼ってもらえて。
これほどいい事はない、と思う。
「ほい、お前ん家着いたけど」
自転車を停めて、私が降りるのを促す。
「うん、ありがと。コケないで帰りなよ!」
「うっせ、すぐそこだよ俺ん家は!」
あはは、と笑って軽く手を振って別れる。これが日常なんだけど…。
なんか今日は早く家に着いてしまった。
…これからは乗せてもらわないで、自転車押してもらって歩いて帰ろう…。
家に入り、部屋で手を見つめてみる。
さっきまで、自転車から落ちないように孝宏に捕まってた手。
まだ孝宏の温もりが残ってる。
…あぁ、手洗いたくないな…。
『好き』
そんな風に伝えてしまったら、どうなるのかな。
今までの仲のいい幼なじみではなくなってしまうかもしれない。
そんなの嫌だ。
けど、この気持ちは知って欲しい。
矛盾してる。
今のところは心に仕舞っておいてやろう。
感謝しろよ孝宏。
そんなことを思っていると、いつの間にか眠りについていた。
遠くから私を呼ぶ声が聞こえた。
声の主は予想がつく。いや、確信が持てる。
「孝宏、今日は部活ないの?」
振り向いて問いかける。
ない!と元気よく答えたのは、私の小学校からの幼なじみ、由良孝宏。
「だから、一緒に帰ろうぜ。どうせ家近いんだからさ」
「そうだねぇ。お前自転車なら乗せてよ」
「え、重くなるからヤダ」
「じゃあ降りろ、私が1人でそれに乗るから」
渋々、といった様子で後ろの荷台に促してくれる。
憎まれ口叩いて文句だって多いけど、本当はすごく優しい。
私は、密かにコイツが好き。
気づいたのは去年あたりで、友達に言われて初めて気づいた。
他の男子や女子にだって見せないようなテンションで話しているらしい。
「バスケ、レギュラー落とされたりしてない?」
「…二度と落とされたりしねぇよ。
…あ、今週の土曜空いてたりする?」
「練習試合かなんか?」
孝宏はバスケ部の9番。
インターハイを前にして、この時期は練習試合が多い。
私も中学まではバスケをしていた事もあって、よく孝宏の試合を見に行く。
「郷坂高校との練習試合。この試合に番号賭かってんだよ」
「マジか!」
孝宏は5番を目指してるらしい。
バスケでは4番がキャプテンで、5番がエースだ。
孝宏の実力を持ってなら取れなくはない番号だ。
「そっか、じゃあまた見に行くよ。頑張って」
「…さんきゅ!」
好きな人の試合を見に行くとか、リア充かよ。
私は恵まれてる。
好きな人の頑張ってるとこが見れて、好きな人に頼ってもらえて。
これほどいい事はない、と思う。
「ほい、お前ん家着いたけど」
自転車を停めて、私が降りるのを促す。
「うん、ありがと。コケないで帰りなよ!」
「うっせ、すぐそこだよ俺ん家は!」
あはは、と笑って軽く手を振って別れる。これが日常なんだけど…。
なんか今日は早く家に着いてしまった。
…これからは乗せてもらわないで、自転車押してもらって歩いて帰ろう…。
家に入り、部屋で手を見つめてみる。
さっきまで、自転車から落ちないように孝宏に捕まってた手。
まだ孝宏の温もりが残ってる。
…あぁ、手洗いたくないな…。
『好き』
そんな風に伝えてしまったら、どうなるのかな。
今までの仲のいい幼なじみではなくなってしまうかもしれない。
そんなの嫌だ。
けど、この気持ちは知って欲しい。
矛盾してる。
今のところは心に仕舞っておいてやろう。
感謝しろよ孝宏。
そんなことを思っていると、いつの間にか眠りについていた。