「山里くん、いこっか」





少し遠慮がちに掛けられた声に反応して、振り向いた。





「うん、そうだね。
確か、5組の教室だったよね?
それにしても紺野さんもついてないね」





さらりと交わした会話のようだったけど、僕は凄くドキドキしてた。





なんせ相手は君なんだからしょうがない。
今までまともに話した事がないんだから。





そんな事を知るはずもなく、君はふふっと微笑んだ。






「うん、そうかもしれないね
でもあたしは山里くんが相手でよかったよ?」





…君は実は小悪魔だったりするんだろうか?
何気ない発言にもみっともないくらいに狼狽えてしまう。





「そ、それはよかった…
じゃあ行こう」





なんとも間抜けな返事を返してしまい、情けなくなってしまう。
恥ずかしさに負け、せっかくのチャンスだというのにそそくさと先に教室を出た。