楽しい時間はあっという間に過ぎていく。


気づけばもう、12月だ。




冬休みが終わって少しすれば、


受験だ。






すごく不安。









隼人に教えてもらっているから




大丈夫かな。


























今日は何でもない日曜日だけど朝からお母さんとけんかした。


きっかけはたいしたことじゃなかったんだけど

受験勉強でイライラしてたから




「もう、こんな家出ていく」



そう言って飛び出して来てしまった。








今、家から少し離れた公園にいる。







着の身着のままで家を飛び出してきたものだから


すごく寒い。



まだ、30分くらいしかたっていないはずだけど


もう、手と足の先の感覚がない。




でも、絶対に家には帰らない。











これからどこで時間を潰そうか



何をしようか




考えていた。












「由夏、こんなところで何してるの?」


ふと、背後から声がした。


隼人だ。



「あっ、隼人、さっき、お母さんとけんかして
家を飛び出してきたの。
隼人こそこんなところで何してるの?」



私は隼人にそう聞いた。




「うん、たまたま通りかかった。
それより、由夏、寒いだろ」


隼人はそう言って自分が着ていた上着を

私に掛けてくれた。



「ありがとう」



隼人の匂いがした。

心も暖かくなった。








「で、いつまでこうしてるの?」


隼人が聞いてきた。




「う~ん、もうしばらく」


私が答えると


「じゃあ、一緒にいていい?」


そう言った。


「いいよ。」


私はすぐに答えた。







「ん?由夏、その靴下」


隼人が笑いをこらえながら言った。



すぐに自分の足元を確認する。






サンダルをはいて来たけど


あっ、靴下が右と左で揃っていない。





急に恥ずかしくなって

隼人を見た。




「クスクスッ」



隼人は大爆笑していた。



「ちょっと、そんなに笑わないでよ、
すっごく恥ずかしいんだから」


私がそう言っても


「だって、おかしいだろ。」



隼人はまだ、笑っていた。




それにつられて私も笑った。




そしたら隼人が


「あっ、由夏が笑ってくれた。
やっぱり、笑ってる由夏が一番、可愛いよ。」



と言った。








私は嬉しくなった。






「まだ、家に帰りたくないんだろ?」


私は首を縦に振って頷いた。



そしたら


「ここは寒いから行くぞ。」



そう言って隼人は私の手首を掴んだ。




隼人が私を引っ張りながら歩きだした。



「ちょっと、どこに行くの?」


私は必死になって着いていきながら

聞いた。



「俺ん家」


隼人はそう言って優しく微笑んだ。















それから、隼人の家に入れてもらって


今、隼人の部屋にいる。





特に何もするわけでもなく一緒にいる。




ただ、隼人と一緒にいるだけで気持ちが落ち着いた。






それからしばらくそうしていた。













急に隼人が抱きついてきた。



「どうしたの?」


私が聞くと



「由夏が好きだから。
ダメだった?」




隼人は私の体に手を回したまま答えた。











それから何時間も隼人の部屋にいた。






窓の外を見ると、外は真っ暗だった。



もう、7時を回っている。



そろそろ帰ろうか。






「隼人、遅くまでごめんね。私、帰るね」


「そっか、じゃあ、送っていくよ」




隼人はそう言って立ち上がった。







二人で外にでるさっき外にいたときよりも空気が

随分と冷たくなった。




時々、吹きつける風は体にしみるほど冷たい。






寒さに震えながら歩いてさっきの公園のところまできた。






「隼人、ちょっと待って」


私は隼人の腕を引っ張って公園のベンチに座った。


「ほら、空を見て」


隼人と一緒に空を見上げた。




空には数え切れないほどの星が輝いてる。




「綺麗だね」


「ほんとに綺麗」



しばらく星を眺めていた。








私はいいっていったのに隼人は私の家まで送ってくれた。





「隼人、今日はなんかごめんね。
ありがとう。」



「俺も由夏に会えて嬉しかった。
風邪引くなよ。じゃあ、また明日」


「じゃあね」




隼人に会って気持ちが変わった私は


お母さんに謝ることを決めて

家に入った。