「いったいあなた何様なのっ?!人の電話勝手に出たり、自分の名前名乗らないで人の名前変呼ばわりって!!信じらんないっ!!あったまきたー!!」
次々と出て来る罵声に男は慌てた。

「ちょっ…おま!騒ぐな!!バレんだろっ!!」
男はコーヒーをテーブルに置き、夏波の口を手で押さえた。

「んむーーっ!!」
夏波はまだ何かを言いたげに叫んでいる。
「分かった!悪かったよ変なこと言って。名前はコウ!!いいな?だから騒ぐな!!」
コクコクと首を縦に振り、夏波が話を理解したのを確認すると、コウはやっと夏波の口元から手を離した。

「なっで…ここまでされなきゃ…納得いかない」
顔を赤く、息を切らして夏波は訴えた。
「だから悪かったって。俺も名乗ったんだし、許してくれよ」
コウは周りを気にしながら、夏波に改めて謝った。
「……まぁ…さっきのミネラルウォーターと、このコーヒーで許してあげる」
にかっといたずらっ子のような顔で夏波は笑った。



「…やっと笑ったな」




夏波の顔を見て
コウも穏やかに微笑った。