ゆっくり家までの道を歩きながら夏波の呼び出し音を聞いている自分にため息が出た。


こんな風に慌てるくらいなら、やはり旅行に行くべきだった。
旅行と言っても、同じ会社、同じ課に所属する二人は上司と部下という関係で、今回もその名目での出張だった。

これを利用しようと持ちかけたのは恭平だった。

夏波は決して自分からは誘って来ない。

妻子ある自分に気を遣ってのことだろうと理解しているつもりだが、たまに、特に、今日みたいな場合には、そんな夏波の態度に苛立ちを覚える。