放課後、部活がある結菜と別れ1人で下校する。



流石に成績表返された後、呑気に他の男と遊ぶ余裕はない。



それもそのはず。


今日1日授業を受けた中で、
入山くんが真面目に話を聞いていた授業は一つもなかった。



大抵机に伏せて寝ているか、窓際の席だからかぼーっとグラウンドの体育をしているクラスを眺めているか



どうしてあんな彼に私が負けてしまったのかと悔しくて、今からでも次のテストのためにと奮起していた。



「おっと、」


駅に着いたところで電車の中で読もうと思っていた参考書が無いことに気付く。


まあ、学校は駅から近いし取りに戻るか

そう思い、教室へ戻った。






「凛斗くんっ...好きですっ、付き合ってください」



おおおっと、


教室へ入ろうとドアに手を掛けた時、

そんな会話が聞こえて反射的にしゃがみ込んだ。


告白タイムを覗いているなんて思われても嫌だし。


青春だなーなんて思っていると、


「悪りぃな、お前とは付き合えねぇ」


...あちゃー、ばっさり。


そう言われた後はもう、涙目の女の子が教室を飛び出して行くだけ。







「お前、本当趣味悪ぃな」


そう声を掛けてきたのは他でも無い入山くん。



いるの、気付かれてたのか...


隠れていたものの、ゆっくり立ち上がりおずおずと教室に入る。


「人の成績表勝手に見たり、告られてるとこ勝手に覗いたり。」



だから、そういうつもりじゃないんだって!



「ガリ子は案外ムッツリなんだな。」


クククッと声を殺して笑う彼。


「...ガリ子って、私の事?」


控えめに聞くと、他に誰がいるんだよと返された。


「テスト、2位だったんだろ?
その成績とるって事は相当勉強しないと無理だろ。」


だからガリ勉女のガリ子。

子が付いただけ可愛いと思え、と言われた。


「んで、忘れ物でも取りに来たのか」


「そ、そうです。」


あくまで地味な生徒。

こんな高圧的な俺様系男子は苦手なタイプ。


ささっと自分の机から参考書だけ引き抜くといそいそと教室を出ようとした。


「これからどんなに頑張ったって、俺には勝てっこねぇよ」


その言葉を背中にかけられ、

何だか分からないけど少し苛立ちを覚えて
教室を出る前に一つ吐き捨てた。



「そ、そんなの、分からないじゃないっ...ですか」



これが私の言えた精一杯の強がり。


そのまま逃げるように教室を出た。