昔から、本が大好きだった。だからこそ、目の前で行われている光景がどうしても許せなかった。しかも、私の大好きな本が。
高校からの帰り道に毎日寄っている図書館。小さな頃から通っているので、第2の家のようによく知っている。
最近、図書館に「図書を切り取らないでください」という張り紙が増えたのだが、まさかそれが自分の目の前で行われているとはついさっきまで考えもしなかった。いつものように高校からまっすぐここにきて、本を選んでいただけだ。年齢は30台後半か。上品なワンピースの奥様風の女性が、自分の前で堂々と本を切り取っている。
(どうしよう...)ひよりはもともと人見知りするたちだったし、ましてや見知らぬ人に注意できるほど物怖じしない性格ではない。
でも、あの本は、「オズの魔法使い」。自分が大好きな本だ。初めて読んだ時から高校生になった今でもずっと読んでいる本。

考えるよりも先に体が動いた。私はその本を奪い取って、「やめてください!!!!何やってるんですか!!!!」と大声で叫んだ。

その女性はふっと笑ってどこかへいってしまった。

(よ、よかった…)と思ったその瞬間。さっきの女性が図書館員の人を呼んできたのだ。
君、と言われる。「桜丘高校だよね。それは立派な犯罪だよ」と図書館員さんに言われる。
(嘘...)
違う違う私じゃない、私はただ止めただけで...
「奥で話をさせてもらうよ」
そう言って引っ張られてく。

こういうとき、物語だったら。かっこよく王子様が現れてくれて、助けてくれる。
でも、現実は。誰も助けてくれない...

王子様なんかいるわけない...