「あの……本当にすみませんでした」


今にも消え入りそうな声で、そう何度も謝る彼に


「い、いえ! 大丈夫ですから」


大袈裟なくらい顔を左右に振って答える私。



なんで私、こんなに動揺してるんだろう?


青白い顔色の彼。

対照的に、火が出そうなくらい真っ赤に紅潮している自分の顔が、ものすごく恥ずかしい。


それにこの暑い中、これ以上親友を待たせるわけにもいかない。


でも、もうちょっとだけ、話してみたかったな……。


一瞬名残惜しさを感じたものの

「それじゃ」と彼に軽くお辞儀をする。


そしてもう一度目に焼き付けるように彼の顔を見つめると、後ろ髪を引かれる思いで私はその場をあとにしたのだった。