今までの僕だったら、そこで相良の方へ突っ込んでいたのかもしれない。

しかし、ガムシャラにやっても、技術のない今の僕には相手のボールを奪うことはもちろん、攻撃を止めることさえできない。



僕は、必死に状況を把握することに努めた。


そして、軽やかなトラップでボールを受け止めた相良と、目が合った。


僕は彼の方に勢いよく一歩踏み出す。


相良だったら、こんなとき……。



僕は二歩目を、相良の方ではなく、ゴールのある中央のスペースに踏み出した。




……それと、相良がゴールに向かって短いパスを放ったのは、同時だった。


僕には、Aチームの選手が背後を回り込んでいる姿が見えていたのだ。


そして相良はその味方にパスを出すだろうと、とっさにに判断した。



僕が足を踏み出したことで不意をつかれた相手は、一瞬たじろぐ。


そしてボールを受け取る瞬間、僕のスライディングタックルを受けることになった。


僕の足が、ボールを真正面からとらえる。


はじかれたボールは、相良を追っていた味方の選手に届けられる。


攻守が入れ替わる瞬間だ。