朝から気になっていたこと。僕は、なぜサッカー部に入ったのか。
 



その答えは、〝好き〞という気持ち。ただそれだけだった。
 


両親がいないのに、そのことを感じさせないほど明るく強い友達のことを好きになり、

彼がしているスポーツに興味を持った。
 
温かく接してくれる先輩たちが好きになった。


『ワンフォアオール、オールフォアワン(ひとりがみんなのために、みんながひとり のために)』


という部の訓示があり、それを好きになった。
 

なんとしてもゴールを阻止するために身体を張ってチームのピンチを救う、ディフェンダーというポジションが好きになった。


 
僕は、サッカーにまつわるいろいろなものを好きになったから入部したんだった。


でも最近は、そんなサッカーをつらいと思って練習していた。



そんな考えじゃ、スタメンになれなくて当然だ。

スタメンは〝好き〞という気持ちを持って、
自分の意思で一生懸命に練習した結果としてついてくるものだ。


『スタメンになるためにがんばる』は、

僕のやる気を高めるモチベーションになんてなってい なかったんだと気付いた。
 

僕は、あの絵本の中のイルカと、主人公の男の子のことを思い出した。



……ふたりとも、自分を信じてくれる大切な人のためにがんばっていたな。



僕がサッカーをがんばることは、誰のためになるんだろう。


仲間のため。


チームのため。


そうだ。


僕は、自分のためじゃなく、自分が好きな、 仲間のためにがんばろう。
 


僕は、立ち上がり、再びシュート練習を始めた。