『くッ ハッ……』
名前も知らない、今日会ったばかりの男性。
性器を貪り、頂上へ導く。
『アユちゃ……ッ 出す、よ!』
男はそう言うと、私の頭を掴み腰を激しく打ち付けた。
口の中に広がる生臭さに鳴咽を漏らしながら私も応じる。
喉の奥に発せられた男の欲望は、どうしても飲み込めず、さりげなくティッシュに吐き出した。
子孫を遺すために作られた「それ」は、しばらくすると役目を失ったように透明に変わってゆく。
何だか……
急に虚しさを覚えた。
『また来てね!』
笑顔でお客様を見送った後、シャワールームで顔を洗う。
冷たい水が身も心も引き締めてくれた。
『よしっ』
もう一頑張りするか。
そう思ったその時、バンッと勢いよく扉が開き、転がるように何か入ってきた。
純白のカーペットに赤くシミを作る。
よく見れば、人間だ。
『アユちゃ、ん……助け……ッ』
顔はパンパンに腫れ上がり、鼻や口から血を垂らす男。
男は涙を流し、力無く私に助けを求めた。
『……真吾、くん?』
どこか聞き覚えのある声に、彼の名を呼ぶ。
彼はコクンと頷くと悲しげな瞳(メ)を見せた。
『……ナーがッ オーナーがッ……!』
腕が折れてしまったのだろうか。
明らかに変な方向を向いている。
これが、
これが掟を破った者の末路?
これほど酷いとは思わなかった。
『真吾ッ 真吾はここかぁ!?』
と突然、扉が開き黒服に身を包んだ男が3人程入ってくる。
『貴様! 真吾をかくまってんのか!?』
男の1人は普段、受付けで客に愛想を振り撒く「藤原」
この店のマネージャーだ。
藤原は私を見て、そう怒鳴った。
『かくまってるっつうなら容赦しねーからな!!』
これが彼らの裏の顔?
恐怖の余り、声が出ない。
足もすくんでしまったようで、逃げる事すら出来ない。
『おい、真吾運んでけ』
そのうちに真吾くんは部屋から出されてしまった。
まるで重いゴミを引きずるかのように、ズルズルと……