静かなエンジン音で、確実に進む車。
車内には無音の空間が出来ていた。
【2人共がアユを好きになった】
改めて幸成の気持ちを知ったせいか、妙に気まずい。
「ありがとう」か「ごめんなさい」か……
やっぱ、何か返事するべきなのかな。
『あ、そーだ』
と、何の気無しに幸成が話し出す。
『十和さんを責めないでくださいね?』
『……え?』
『俺達が連絡取り合ってると言っても、やましい事はないし。 ましてやアユの不利になる事もないっすから』
……何よ。
嫌いなくせに、十和をかばってんの?
可笑しいよ、それ。
『男の事情……ってやつ?』
『はは、そんなとこっすね!』
あ、笑った。
『可愛い顔出来るんじゃん。 幸成も』
『そっすか? 報われない恋して、俺も丸くなりましたかね』
はは、笑えないよ、それ。
私に言う台詞じゃないし。