無茶苦茶。
信じらんない。

何で幸成なんか助けるのよ。

美香も……私も。

『痛ってー。 もっと優しく出来ないんですか?』

藤原が席を外した瞬間、幸成の手を取って逃げた自分。

助けるつもりなんてなかったのに、夢中で隠れる場所を探した。

『自分が悪いんでしょ。 藤原に逆らうから』

誰にも監視されない場所。
シャワー室しか浮かばなかった。

とりあえず怪我した場所を濡らしたハンカチで洗うと、幸成は顔をしかめてみせた。

『げ。 絆創膏なんか貼るんすか? 目立つじゃないですか』

どちらにしても目立つでしょ。
それだけ酷く殴られてんだから。

『何を揉めてたの? 藤原と』

パンと絆創膏を張り付け、幸成の目を見る。
真ん丸に見開いていて、なんだか可笑しかった。

『外のパネルに出す写真の事』

『パネルの?』

それって前に私が出していいって言ったやつだよね?
何で今更、そんな物で?

『アユの写真は出せない。 そう言ったら殴られたんすよ』

『は?』

『は?じゃないっすよ。 罪な女ですね』

フッと笑みを見せる幸成。
馬鹿馬鹿しくて、私は笑えない。

写真なんかどうでもいいのよ。
どうせ、こんな仕事してるんだもの。
堕ちるとこまで堕ちたっていいんだ。

『藤原に目つけられて、これから大変よ?』

それなのに、こいつったら……

『いいっすよ別に。 ある程度、覚悟して歯向かったんで』

『……馬鹿』

『それでも、俺はあのパネルにアユを載せたくなかった』

優しいのか冷たいのか。
本気なのか、嘘なのか。

もう、よくわからない……