『指名してくれて、ありがとう! 今日は特別に頑張っちゃうね?』
くだらない。
つまらない。
『シャワー行こう? 私が綺麗にしてあげる』
楽しくない。
『お疲れ様です』
幸成の声掛けも気付かぬフリで、目の前を通り過ぎる。
『十和さんから連絡はないですか?』
白々しい。
わかってて、言ってるんでしょ?
『怖…… 睨まないでくださいよ』
十和はもう来ないんだよ。
「バイバイ」って、あの声が忘れられないんだ。
『ねー幸成。 藤原が私の写真を外に飾れないか聞いてたよね』
『あ、そうっすね。 でも断っときましたよ?』
『いーよ、あれ。 もっと稼ぎたいし、飾ってもいいよ』
はは、可笑しー。
幸成の奴、目を見開いて固まってる。
確かに最初、顔出しするの嫌だったよ。
でもさ。
正直、どうでもいいの。
『本当にいいんすか? 今までと違って、親兄弟や友達も見ますよ?』
焦ってるね、幸成。
それ、めちゃくちゃ面白い。
『別に? 友達なんかいないし』
私ね。
本当に十和が好きだったみたい。
いつの間にか、大好きになってたみたい。
だからさ、
十和がいないなら、何でも出来るんだ。
また、強くなれるんだ……