雨が降る。
真っ黒で痛いくらい強い雨。

心の中に……




『最近、暇だねぇー? アユ』

最後に十和を見てから、もう半月が経とうとしていた。

店内は相変わらずで、藤原が主導権を握る。

一つ変わった事と言えば、私の売上が一気に下がった事。

やっぱり、客が増えたわけじゃなかった。
十和が、私に貢献(コウケン)しすぎてただけだったらしい。


『あ~ 忙しい忙しい!』

さりげなく繁盛(ハンジョウ)ぶりをアピールしながら隣のドレッサーに奈美が座る。

さっきの美香の「暇だね」を聞いてたんでしょ。
わざとらしいってば。

『あ、可愛い~! 自分でやったの?』

私の手を握り、目を輝かせる奈美。
最近、美香にやってもらったネイルアートが気に入ったらしい。

『現金なやつ』

隣でボソッと呟く美香に、つい笑いが漏れてしまう。

私の売上が下がって以来、奈美は上機嫌。
あれだけ敵視していた事が嘘のようだ。

少しずつ、元の生活に戻ろうとしている。
特に悲しみも喜びもない、くだらない生活。

そう。
十和が来る前の生活に……