何度も何度もキスをした。
優しくて暖かいキス。

私を大切に扱ってくれるキス。

ううん、違う。
こんなの違う。

『何でキスしかしないの?』

大切に扱うふりで、ごまかしてる。
十和は先へ進む事を躊躇(タメラ)ってるんだ。

『……ごめん、抱けない』

弱々しく、でもハッキリと言い切った台詞。

なによ、何なのよ!
奈美が抱けて、何で私が!?

『馬鹿にすんな! 好きなら抱けるでしょ!?』

ぶん殴ってしまいそうな右手を、左手で押さえる。
手首が痛くなるくらいきつく、爪も刺さるくらい強く。

『こんなとこ来ておいて変だけど…… 俺、アユにそういうの期待してない』

「アユに」
だから奈美に頼んだの?

私が使えないから?
私に魅力ないから?

これからも奈美のとこに通ったりするの?

そんなの嫌。
耐えられない。

私、十和の特別になりたいんだよ。


『ごめんね』

大きな手が、私の髪を撫でる。

謝らないで。
終わらせないで。

『バイバイ、アユ……』

消えないで。
捨てないで。

お願い。
傍にいてよ……ッ

【二度と来ないで】
あんなの、本心じゃないの。

だって、悔しかったんだもの。
奈美に盗られたくなかったんだもの。


それだけだったのに、
十和を追い出したのは私。

十和との関係を切ったのも私。

もう、十和は来ない。
会えない。
話せない。

『嫌、嫌……嫌ぁー!!』

ただ、十和の特別になりたかっただけなのに……