奈美が十和を盗った。
十和が奈美を選んだ。

それが一体どういう事なのか。
どんな意味なのか。

考えるより先にここに来ていた。

【最近、録画チェックしてるの俺なんで】

きっと、頭の片隅に、幸成の言葉が残ってたから……



『幸成! いるんでしょう!?』

カウンターより奥にある黒服達の休憩室。
そのさらに奥にある小部屋に、この店のほとんどを監視できる場所がある……らしい。

実際に入った事はないし、どんな風になってるのか聞いた事もない。

だけど、この部屋だけは鍵が着いていて、決められた人しか入れないから……

だから私達は、ここを監視室と名付けた。


『何か用っすか? 俺、監視任されてて忙しいんすけど』

けだるそうに出てくる幸成を押し退け、部屋へ足を踏み入れる。

しかし。

『あっぶねー』

瞬時に伸びてきた幸成の足につまずき、床に平伏す格好になってしまった。

『流石にマズイっすよ。 いくらアユでもここには入れられません』

わかってる。
わかってんだよ、そんな事!

『もしかして、気になるんですか? 十和さんが今、何をしてるか』

……幸成も知ってる。
本当に十和は、ここに来てるんだ。

『知らない方がいい事もあるんじゃないですか?』

お願い。
冷たくしないで。

ごまかさないで教えて。

『お願い……幸成ッ』

自分の目で確かめたいんだよ!


『アユ!』

と、突然。
背後から名前を呼ばれ、焦って床から起きる。

今まで、はいつくばっていたと思ったら、急に恥ずかしくなってきた。

『アユ大変! 十和さんが……ッ』