『そういう美香こそ、どうなの?』

『うん? 幸成くん?』

美香は突然の問い掛けに、キョトンとした様子で私を見る。

今さらだけど、私は美香に幸成との事を聞いた事がない。

認めないと担架をきった手前、聞くのは図々しいような気がして、
ずっと聞けなかった。

『最近、ようやく懐いてくれたかな』

照れ臭そうに笑う美香に、私までも気恥ずかしくなる。

そんな女の子みたいな顔しないでよ。
ビックリするじゃん。

『幸成くん家ね。 結構、複雑みたいでさぁ』

複雑?

『なんでも両親共に愛人つくっちゃってるみたいな』

あれ?
そういえば……

【愛は無いけど金はあるんすよね】

前に幸成はそう言った。
あれは冗談じゃなかったんだ。

『それ聞いたら、余計に気になるようになっちゃって……』

愛なんてもの、私にはよく解らなかった。
未だに解っていないけど、美香の話を聞いて、少しだけ知った気がする。

恋をすると、その人だけが特別になるんだ。

私が苦手にしている男でも、美香にとっては特別で大切な男(ヒト)。

人を好きになるって、どんな数式や方程式を使っても答えが出ない。
だけど皆、何と無くで答えを知るんだ。

私も式は解らないけど、
何と無く、答えは出てる気がするよ。

『頑張ってね、美香』

信じられないほど、素直に応援できる。
前はあんなに認めたくなかったのに。

『頑張るよ! アユっていう強力なライバルいたって、関係ないんだから』

ん?
ライバル?

『もしかして美香、知ってるの?』

幸成が私を、どう思っているか。

『知ってるよ。 最初から幸成くんは、アユしか見てなかったもん』

悪戯に笑ってみせる美香。

最初から知っていても、幸成が良かったの?
一体どこにそれだけの魅力があるんだろう。

『ま、幸成くんにも十和さんっていう強力なライバルがいるし。 だから私、十和さん応援しちゃう!』

私には解らない幸成の魅力。
解らないけど美香が出した答えがそれなら、仕方ないか。