『最低ッ! 最低最低最低ッ!!』

何で十和にッ!
十和に……ッ!?

『やっぱ好きなんすね。 十和さんの事』

幸成は血の混じった唾を床に吐き捨てると、そう言って私を見た。

好き?
私が十和を?

違う。
好きなんかじゃない。

『そこまで嫌がるなんて、一体どんな奉仕したんすか? オーナーに』

……ッこいつ。
わかって言ってる。

誰に聞いた?
オーナー自身か?

いや、幸成が来たのはオーナーが事故にあった後だ。

藤原か?

『ま、どちらにしろ十和さんは無駄っすよ』

『無駄?』

『好きになっても無駄です』

ハッキリと言い切る幸成。
その顔にはうっすらと笑みまで浮かべていた。

『理由は?』

別に好きなわけじゃないけど、
そこまで言うなら理由も聞きたくなるじゃないの。

『教えるわけないでしょう? 特に、アユには教えない』

何だこの勝ち誇った顔は。
私の反応で何かを探ってる?

いや、単純に楽しんでるだけか。

『頼んでみたらどうっすか? 「貴方の秘密を教えてください」って』

秘密?
それが十和を好きになる事と、関係があるの?

十和の秘密って一体……

『ま、十和さんもはぐらかすと思うけどね』

ハハハと甲高い笑い声を上げ、幸成は去っていく。

【愛されてんだ、立川くんに】

はぐらかす?
確かに十和ははぐらかした。

【アユ、実は俺……】

いや、言おうとしてた。
でも言えなかったんだ。

秘密って、何……?