全身の神経が一点に集まったように、繋いだ手が熱かった。
いつもシャワー室に直行の十和。
今日はベッドから動こうとしない。
幸成が何か言ったから?
それで様子がおかしいの?
『十和? シャワー室、行かないの?』
覗き込んでみると、ようやく我に返ったように立ち上がった。
『今日、何だかおかしいよ? 幸成に何言われたの?』
幸成の事だ。
どうせ十和を傷付けるような暴言を吐いたんだろう。
もしかしたらどこかから十和が私生児という情報を仕入れ、それに対して罵声を浴びせたのかも。
奴ならやりかねない。
『私、幸成に注意しとくね。 十和の事』
美香だけじゃ飽き足らず十和にまで手を出すなんて、
絶対に許さない。
『別に何も言われてないよ?』
……え?
『アユの事でヤキモチ妬かれてただけ。 ただそれだけ』
いつもの笑顔を見せる十和。
力強い腕で私を引いて立たせると、耳元で囁いた。
『俺も妬いてるけどね? 立川くんに……』
どうして急に積極的なのか。
本当に困ってしまう。
そんな事されたら顔が……
『可愛い。 真っ赤』
そう、真っ赤になってしまうんだよ。
『何かおかしい。 今日の十和!』
いつもと違う十和に、動揺を隠せない。
『俺も焦ってんだよ』
『え?』
焦ってる?
十和が?
どうして?
『早くアユが欲しくて、焦ってるんだ』