あれからさらに一週間。
最後に十和の顔を見てから、25日以上経っていた。
いい加減、信じたくはないけど奈美の言葉が気になってくる。
【どうせ、性欲処理の道具なんだし】
十和は違う。
十和だけは、そんなつまらない男じゃない。
そう思いたいのに、思えなくなってきたよ……
『また来てねー』
今日も、笑顔で客を見送る。
十和が来なくなってから何故かハズレばかりで嫌気がさすよ。
今日もむさ苦しいオヤジが相手だし。
『で……なの……』
休憩室へと向かう途中。
待合いからボソボソと話し声が聞こえた。
それは間違うはずもなく、ずっと待ち望んでいたもの。
十和の声だ。
『十……』
「十和」
そう呼ぼうとしたが、ふと見えた十和の険しい顔に、出かけていた言葉を喉に詰まらせた。
何?
何で変な顔してんの?
それに十和と話してるの、
幸成だ……
幸成と十和。
一体、何を話してるの?
『……十和』
張り詰めた空気に耐え切れなくなった私が、声を上げる。
内容が気にならないと言えば嘘になる。
でもそれより、2人の会話を聞くのが何だか恐かった。
『あ、久しぶり、アユ』
こちらに気付いた十和は、先程の険しい表情から一変して、優しい笑みを見せる。
『今空いてる? 指名してもいいかな』
まるで何も無かったかのような笑顔。
そんな顔をされたら聞けなくなってしまう。
幸成との事……
『金持ちの道楽なら、やめといてくださいね?』
と突然、幸成がそう言って口角を上げた。
『……アユ、部屋で待ってて?』
それに動じず、私の背中を軽く押す。
『うん、待ってる……』
きっと、私がいない方がいいんだろう。
私がいたら話せない事なんだろう。
寂しいけど、
今日は十和の顔が見れたから、寂しさくらい、我慢するよ。