忘れていた。
自分が風俗嬢だという事。
欲望を吐き出す道具だって事。
十和が当たり前の顔をして会いにくるから、私も当たり前だと思ってた。
どうして忘れてしまってたんだろう。
私は所詮、店の捨て駒。
客からは、消耗品にすぎないのに……
『バイバーイ、また明日ねー』
ピンク色のマンション前。
美香は満面の笑みで、私達に別れを告げる。
『じゃあ明日も同じ時間に向かいます』
社交事例だろう。
いつもの台詞を口にする幸成。
私はというと、あの奈美の言葉から体がおかしい。
今までの疲れがドッと出たような倦怠感。
美香に笑顔を見せる事すら億劫(オックウ)だった。
【性欲処理の道具】
私はどうだ?
十和の性欲も処理できてない。
ただの役立たずで、金食い虫。
いつチェンジされてもおかしくない。
それを解っていても、どこかで期待してしまう。
十和だけはいつまでも会いに来てくれるんじゃないかって、
そんな馬鹿な事、思ってた……