翌日の学校。


あたしはちょっと、へこんでるからね。


結露した廊下の窓に、指で落書き中。
うん。ひとりだよ。
寂しいよ普通に。



「なーにしてんの」


「わ、おはよー慶太君」


今日もいい匂い。
アロンの香水の匂いがする。



「その落書き……何?犬?」


「トラだよ」


「ト……。まじ?」



慶太くんにくすくす笑われるのは、嫌いじゃないよ。



「はーぁ」


「芙祐ちゃんが溜息なんて珍しい」



なんかあった?って、慶太くんも窓に指を滑らせながら聞いてきた。


「……!トラだ、うまいね」


「芙祐ちゃんよりはね」


「む」



ヤヨは、絵うまいのかな。

そういえば知らないなぁ。

麻里奈ちゃんは……。



「はぁ……」


「また溜息?大丈夫?話聞こうか?」


「うん……」


って、頷いてからハッとした。

何、元カレに今の恋愛相談しようとしてるんだろう。
無神経の極み。あたしのバカ。



「弥生くんでしょ?喧嘩した?」


「いや……ううん。慶太くんに相談するのは、ちょっと」


「何をいまさら」


ははって笑う。


慶太くんにとって、あたしは。
もう十分に清算された相手みたい。
多分、そう。