トイレから出て、境内を歩く。
お互い無言だよ、もちろん。



さっき、ヤヨがいたところ……って、
どこだっけ?


「さっきヤヨと別れた場所ってここの自販機だったっけ?」


「わからない。わたし方向音痴なんだよね」


そのわざとらしい困り顔、
はぎとってやりたい、


そんな物騒なこと、
ちょっとしか思ってないよ。



「さっき別れた時、人混みで場所把握できてなかった。ヤヨに電話してみるね」



「スマホ、玄関に忘れたって、やっちゃん言ってたよ」


「嘘でしょ?!」


「本当だよー」



のほほんと笑う麻里奈ちゃんは、
「いつか会えるよ」なんて言ってるけど




今すぐにでも、
麻里奈ちゃんと離れたいし
ヤヨに聞きたいことはたくさんあるの、あたしは。



「人混みに入って探さなくても、きっとやっちゃんはみつけてくれるよー」


なんて、
麻里奈ちゃんは、
余裕の構えであたしに微笑む。




ちょうど、そのとき。
スマホが震えた。