「ほとんどなにもわからないのに、私はあなたを探してたってことだけはわかるんだ」

冷たい風が吹いてきて、お互いにはっとしたように体が離れる。

「私の名前は楓花だよ。
だけど楓って呼ばれて反応した。
きっと早太郎さんもそうでしょう?」

彼は頷いた。

「俺さ、この近くに住んでるのに壬生寺なんてきたことがなかったんだ。」

だけどさ、とさらに続く。

「仕事早上がりして帰ってる途中にどうしてもここに来なきゃならないって思って来たんだよね。

そしたら、君がいた––––––」

この一言に、私は運命というものを感じてしまった。

「楓–––いや、楓花を置いて先に行っちゃってごめん。

次は、もうそんなことしない。

だからさっ」

息を飲む。


「俺とまた、始めてくれませんか」