東京本社は神谷町のB.C.squareTOKYOというビルの11階にある。

いわゆるミドルフロアと呼ばれるエリアに位置し、入ったのも後からで、いわば新参者あつかいをされたりすることもある。

とりわけ上層階のアッパーフロアと呼ばれるエリアのビジネスマン達からは、

「古くさい老舗の化粧品会社」

という目で見られていた。

が。

京都支社で営業主任をしていた駿(かける)からすれば、

「まぁ京都には三百年四百年ぐらいの老舗もゴロゴロ転がっとるし」

それに比べたら大した悪口ではない、というような面構えで、ふてぶてしいばかりの白い眼をして、鼻で笑ったほどであった。

だいいち。

「うちの実家の行き付けの歯医者、元禄時代からで今で十二代目やで」

そんなんなんぼでもおるがな、とエレベーターで久々に会った三浦紫(ゆかり)という同期入社の同僚に語ったこともある。