そして、いつの間にか触っても嫌がらなくなった。そうして、ノアと触れ合っていたある日、誰かに話しかけられた。
「最近貴族様がここに通ってるって聞いたけど……貴族様がこんな所に何か用?」
「こんにちは。私はエヴェリーナと申します。初めまして」
と、握手を促す。だが、その手は振り払われた。そして、私に向けて短剣を構える。
「一応自己紹介はしといてあげる。私はアニ。すぐにここから立ち去りなさい」
「何故?」
「貴族の小娘が来ていいところじゃないんだよ!」
怒りをたたえた目でこちらを睨んでいる。
「何に対して怒っているのか存じ上げませんが、私に刃を向ける程の理由があるのですか?」
「………っ…!」
「姐さん!騎士に…………!!」
「ちっ!ずらかるよ!!」
どこに潜んでいたのか、数人がいきなり出てきた。
「………」
皆して私を人睨みして去っていった。
「…ねぇ、ノア」
「……………?」
「……やっぱり何でもない。……また明日ね」
私はノアに手を振る。ノアは笑って振り返してくれた。私は屋敷に戻っていった。